暦は12月だというのに、この暑さはなんだろう。もうすでに10時半。常緑樹とシダを、真直ぐに日差しが照らす。石ころが散らばる登山道は、思いのほか歩きにくい。おぼつかない足取りを、八十八ヶ所の石仏が、にこやかに見守る。大きなシイノキが、心地よい木陰を作る広場に出た。眼下には、刈り込みを終えた田んぼが、碁盤の目のように並び、ぎゅっと凝縮する宍喰の街並みの向こうに、水床湾が見える。宍喰の向こう側は甲浦、そこはもう高知県。
落ち葉の上に、どんぐりが無数に散乱している。シイノキの根が浮き上がる。そこに並ぶのは、乳白色のヤッコソウたち。もうすでに、受粉を終えた個体が、ほとんどだ。雌しべが露出し、頭は褐色に染まっている。鱗片葉も透明感のある飴色になっている。目的を達成したヤッコソウは、身体を黒く枯らして、根と同化していく。その一方で、新芽も観察できる。寄生植物であるヤッコソウは、栄養をシイノキの根から得るために、葉緑素を持たない。その結果、体色は乳白色となる。僅か数センチの植物だが、世界最大の花を持つ、ラフレシア・アーノルディイの仲間だ。
鬱蒼とするシイノキの林の中に、古びた石段が並ぶ。そして、丁寧に組まれた石垣が現れた。ここは圓通時跡。かつては境内を飾っていたであろう、見事な紅葉が、辺りを明るく照らし、往時を思い起こさせる。土台となる遺構は原形をとどめるが、その上の構造物は、地面に散乱し土に返ろうとしている。無残に散らばる瓦が物悲しい。
やがて尾根に乗ると、真青な空が広がった。空の青を映す、穏やかな海に波光が煌く。水床湾に浮かぶ島々を、見下ろす山頂。水平線の丸みは、この星が球体であることを教えてくれる。大気は、夏のものよりも、透明感を帯びている。冷たい雪に、閉ざされることのない海辺の山にも、緩やかに確実に冬が、近づいている。
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