久しぶりに全線開通した、剣山スーパー林道を走る。しかし、12月1日からは、冬季閉鎖となってしまう。ファガスの森も、シャッターを下ろして、冬を待つばかり。背後に広がるブナやヒメシャラは、すっかり葉を落とし、青い空にひび割れ模様を広げている。
第一コルから山へと向かう。北西の風が吹き付ける、冬枯れの尾根は−2℃。強風にあおられる枝先に、煌くものが見える。まだ若い霧氷が、細枝にしがみつき、成長のときを待っているのだ。ブナたちは、蔓延る霜に幹を覆われて、凍えている。登山道には、ブナの落葉が、丹念に敷き詰められ、粉砂糖で飾られる。傾斜を増す尾根の向こうで、太陽が呼んでいる。ガラス細工の枝を透過する光線が、砂糖菓子の道に木漏れ日を落とす。凍りつくロープを掴んで、輝く梢を仰ぎ見る。そして、眩しさに目を細める。
そこは、暖かい場所だった。冷たい北風を防いでくれる、南向きの山頂。周りの樹木への着氷を許さない陽光が、降り注ぐ。西に続く山並みの先に、樫戸丸が見える。北西面は霧氷が張り付き、南面は冬枯れの穏やかな樹林。その左肩から、雪を載せた剣山が、のぞいている。東には、ブナの森から頭を突き出す、雨量レーダーの丸い頭。
冷たく冴え渡る冬が、尾根の北側で、薄暗い谷筋で、待ち構えている。太陽の力が弱まるのを待っている。季節のせめぎ合いを見せる稜線のように、わたしたちの心も浮き足立っている。
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