雪の多いシーズンは、渓流の水量も多い。釜ヶ谷渓谷の大釜の滝も、轟音を響かせて、滝つぼを削る。剣山スーパー林道はあちらこちらで寸断され、復旧工事が追いついていない。これも、台風と雪の仕業。人の営みは、地球の身震い一つに翻弄される、ちっぽけなもの。
二度の迂回路を通り、ようやくたどり着く登山口。新緑は消え去り、猛々しい勢いで樹木は茂る。青いペンキをべったり塗りつけた空からは、容赦ない紫外線が注ぐ。早く森へ入ろう。
ホトトギスが啼いている。出番を待ちかねるように、シコクブシとテンニンソウの葉が、繁茂している。フタリシズカとバイケイソウは、今にも蕾がはじけそうだ。大きくはないが、存在感のあるブナが、見下ろす。緑の天蓋の隙をつき、日差しが影を射抜く。強い光は、コントラストの強い影を生む。強く照らせば照らすほどに、影は暗くなる。
オオヤマレンゲは、まだ青い蕾のままだ。葉を茂らせることばかりに専念して、花を咲かせることを、忘れてしまったのかい?盛大にテリトリーを広げる枝葉に聞いても、答えてくれるわけもない。
小さな丘を登ると、正面に一ノ森と剣山が見えた。右には赤帽子、丸笹、塔の丸、さらに奥には、矢筈山も。樫戸丸の山頂に座り、昼食を摂る。地球の丸さが、許す限りの展望を味わう。山頂標識に描かれたオオヤマレンゲが笑っていた。 |