登山口になる住吉神社付近の集落には、植栽だろうかフクジュソウがすでに姿を見せている。道路工事の通行時間制限に、費やした時間を取り戻すように、ばたばたと準備を整える。
神社脇から始まる道は、いきなりの急登。まっすぐに伸びる植林の梢から木漏れ日が降り注ぐ。気温はすでに13℃、吹き出る汗はとめどない。
残雪が斑に広がる自然林。急登の途中に現れた小さな平原が、黄金に輝く。眩しいばかりのフクジュソウ大群落!陽光を集める花弁は、それ自身が輝いているかのようだ。あちこちで、花におびき寄せられるミツバチのように、カメラを近づける姿が見える。花から花へと飛び回り、シャッターを切る。
フクジュソウたちに後ろ髪を引かれつつ、ふたたび歩き出す。また急登が始まった。喘ぎ喘ぎ、自然林と植林の境目を登ると尾根へ飛び出した。やがて残雪の自然林へと変化する道は、緩やかなうねりを繰り返し、開けた鞍部へと抜けた。南の展望が開けた。三嶺〜天狗〜剣山が、谷間に雪を残し美しい斑模様を見せる。
偽ピークに騙されつつ、やっと山頂にたどり着く。北に続く尾根の先に烏帽子山、東に振ると矢筈山、南に下り剣山から三嶺、天狗塚、西には国見山。360度の大パノラマ!蒼天の下、残雪が描く斑と足元の笹原。今この一瞬しか見ることのできない風景が広がる。
青い空を背にして下る帰り道、雪は緩んで重くなる。フクジュソウは、傾く太陽を追うように、小首をかしげて待っていた。開いていた花弁は、少しすぼまって可憐だ。春を告げる花が、少しだけ遠のいた。この数時間の間にも、季節は僅かに進んでいた。 |