その日はフェアバンクスまで残り50キロ程度だった。天気も良く昼前にはフェアバンクスに到着したが、3~4軒あるどのホステルに泊まろうか決めていなかった。ダウンタウンではすぐに立派なビジターセンターを発見することができたので、少し情報収集をすることにしたが、事件はここで起きてしまった。
午前11時、すぐに戻るつもりでビジターセンターの正面入り口前にど~んと鍵もかけず中に入ってしまった。とは言え中からもよく見える位置に停めていたし、まわりの人々は観光客ばかりでとても安全な雰囲気ではあったので、ここで盗難に遭うなどまったく考えていなかった。しかしついつい長居してしまい、30分弱目を離していたかも知れない。さあ出ようかと戻ると停めていたはずの場所に自転車がない・・・あれ?じゃまだから移動させられたのかな?などと最初は思った。急いで建物の廻りを探して見たが、どこにも見つからない。盗難か!?あろうことかパスポートなど貴重品を含む、全ての荷物ごとそっくり消えてしまった。
急いで中に戻りセンターの職員に自転車の盗難に遭ったことを伝え、すぐに警察を呼んでもらった。警察はすぐに動いてはくれたが、おそらく無事無傷の状態で出てくる可能性は低いだろう。頭の中は真っ白になり、あまりのパニック状態に吐き気までしてきた。
不幸中の幸いだが、発生場所がビジターセンターだったため、いろいろな面でサポートを受けることができた。まず電話を借りて実家の家族に連絡をとり被害を最小に防ぐため、クレジットカード、トラベラーズチェック、携帯電話をストップしてもらうよう頼んだ。次にアンカレッジにある領事館に連絡をとり、盗難の報告と今後どうするか相談する。自転車はおそらく出てこないだろうと考え、緊急帰国の方向で考える。お金はVISAカードの緊急キャッシングサービスを受けれることが分かった。身分証明がないので999ドルが限度だが、それだけあればしばらくはしのげるだろう。
夕方になり以前頭の中はパニック状態だったが、職員の人がホステルを予約してくれたので宿に向かうことにする。日本語ができる職員のコリンさんが宿まで送ってくれることになった。着替えもなにもなかったが、途中のスーパーでジーパンとシャツと下着を購入する。
宿には着いたものの、とても寝れるような精神状態ではなかった。1か月振りのベッドだったが、なぜあのとき鍵をかけなかったのかと朝まで悔んだ。